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肺胞蛋白症とその治療

肺胞蛋白症とその治療

肺胞蛋白症とは

肺胞蛋白症の概要

肺胞蛋白症の疾患概念

肺胞蛋白症(PAP)はサーファクタントの生成または分解過程に障害があり、そのことが原因で肺胞腔内、終末気管支内にサーファクタント由来物質の異常貯留を来す疾患の総称である。

肺胞蛋白症の定義

肺胞蛋白症は、肺胞腔内、終末気管支内にサーファクタント由来物質が異常に貯留し、原則として両側肺にびまん性に病変が見られる。

肺胞蛋白症患者のBALFおよび病理所見

BALF外観
肺胞蛋白症の患者から得られた肺洗浄液。ミルク状、米のとぎ汁状と表現される。


肺胞蛋白症のHRCTから合成した立体画像


BALFのサイトスピン標本
大型で核の偏在した泡沫状マクロファージ (矢印1)、小型マクロファージ(矢印2)、無構造物質(全体に分布)を認める。(Diff-Quik染色)

気管支肺胞洗浄液中の泡沫状マクロファージ(矢印1)小型の核に老廃物を取り込んだ泡沫状の胞体が特徴である。無構造物が全体的に分布している。


サーファクタントの電子顕微鏡所見
無構造物質と膜が融合した構造のlamellar bodyをみとめる。


肺生検病理象(PAS染色)
肺構造は正常に保たれているが、肺胞壁はリンパ球浸潤のために軽度肥厚している。肺胞腔内にHE染色で好酸性に染まるサーファクタントが充満し、肺胞マクロファージがサーファクタントに埋もれている。(HE染色)

肺胞蛋白症の分類

1.先天性肺胞蛋白症

サーファクタントの生成または分解過程に先天的な障害があり、肺胞蛋白症を発症する場合をいう。先天性肺胞蛋白症の病因として、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の受容体欠損、あるいはサーファクタント蛋白B及びC、ATP-binding casette transporter A3の欠損が知られている。しかし、殆どの場合、原因は不明である。抗GM-CSF自己抗体は陰性である。

2.自己免疫性(特発性)肺胞蛋白症

原発性肺胞蛋白症、特発性肺胞蛋白症と呼ばれていた多くは抗GM-CFS自己抗体が証明され、自己免疫性肺胞蛋白症と呼ばれる。尚、自己抗体検査が実施されていない場合で、先天性肺胞蛋白症、続発性肺胞蛋白症が否定される場合は、従来の呼名に従い特発性肺胞蛋白症と呼ぶ。

※注:かつて特発性あるいは原発性肺胞蛋白症と呼ばれていた肺胞蛋白症のほとんどが抗GM-CSF自己抗体陽性であることが明らかとなっている。抗体が測定され陽性である場合は自己免疫性肺胞蛋白症と呼ぶ。先天性、続発性が否定され、かつ抗体が未測定の場合は特発性肺胞蛋白症と呼ぶ。

3.続発性肺胞蛋白症

続発性肺胞蛋白症は、血液疾患(特に骨随異形成症候群)や呼吸器感染症(ニューモシスチス肺炎や非結核性抗酸菌症など)、粉塵吸引等に合併する。抗GM-CSF自己抗体は陰性である。

4.未分類肺胞蛋白症

上記に分類されないもの。

肺胞蛋白症の発症機序

肺胞蛋白症の90%を占める
自己免疫性(特発性)肺胞蛋白症発症メカニズム

健常肺では、II型肺胞上皮細胞から放出されるGM-CSFが未熟な肺胞マクロファージのGM-CSF受容体に結合し、シグナル伝達により、転写因子PU.1が発現して肺胞マクロファージの終末分化が起こり、成熟マクロファージとなる。成熟マクロファージは、サーファクタントを取り込み、分解することにより肺胞のホメオスターシスを保つ。自己免疫性(特発性)肺胞蛋白症の肺では、II型肺胞上皮細胞から放出されるGM-CSFは肺胞内に豊富にある抗GM-CSF自己抗体により中和され、GM-CSFが未熟な肺胞マクロファージの受容体に結合するのを防ぐ。そのために、肺胞マクロファージの終末分化または増殖は起こらず、サーファクタントの分解が障害される。

正常肺におけるサーファクタント代謝
サーファクタントはII型肺胞上皮細胞で合成される。サーファクタント蛋白とリン脂質の複合体はlamellar bodyとして肺胞内に分泌され、肺胞上皮で格子状のtubular myelinとなって界面活性を示す。サーファクタントは分解された後、肺胞マクロファージおよびII型肺胞上皮細胞で代謝される。サーファクタント分解には、肺胞マクロファージが重要な役割を果たしている。その肺胞マクロファージの終末分化には主としてII型肺胞上皮細胞が出すGM-CSFが必須である。

GM-CSFシグナル異常による肺胞蛋白症の発症
II型肺胞上皮細胞はGM-CSFを産生するが、肺胞腔内の抗GM-CSF自己抗体により中和され、生物活性を失う。肺胞腔内の未熟なマクロファージはGM-CSF受容体をもっているが、中和されたGM-CSFは受容体に結合ができない。したがって、肺胞マクロファージの終末分化が障害され、 肺胞マクロファージのサーファクタント代謝能が低下し、肺胞マクロファージはサーファクタントを蓄積して肥大しやがて破裂する。肺胞内には、分解されないサーファクタントや細胞断片が蓄積する。

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